毎年「フレブルLIVE」が終わると、必ず訪れる場所がある。
——いや、正確には“会いにいく人がいる”という表現のほうが近いかもしれない。
沖縄を拠点に活動する、元ハンバーガーショップ「ボアソルチ」のご夫婦だ。
出会いは5年前。
フレンチブルドッグがつないでくれた、偶然のようで必然だった縁。
そして、火災による全焼という大きな出来事を乗り越え、それでも前を向き続ける二人の姿。
ボアソルチとの出会いから、今の関係性に至るまで。
スマホのプライベート写真と、実際に足を運んだ「新たなアトリエ」の写真とともに振り返っていきたい。
初めての出会いは、2021年。ぶらり旅が功を奏す

ボアソルチのご夫婦に初めて会ったのは、2021年の秋ごろだった。
コロナ禍の緊急事態宣言が明け、ようやく外出できる空気が戻り始めた頃。わたしたち夫婦は、久しぶりに沖縄へ旅行に出かけた。
わたしたちの旅のスタイルは、目的地を細かく決めない。
有名な観光地を巡るよりも、“その場所ならでは”の食事やお酒を楽しむことが何よりの目的だ。
昼間は目的もなく車を走らせ、直感のままにぶらぶらする。
ボアソルチとの出会いも、そんな“ぶらり旅”が功を奏した結果だった。
「なんか良さそうだよね」
そう言って車を停めたのが、宜野湾(ぎのわん)というエリア。
アンティークショップや小粋なカフェ、タトゥースタジオが点在し、わたしたちがこれまで抱いていた沖縄のイメージとは、少し違う空気が流れていた。
ふらふらと歩いていると、視界に飛び込んできたのは、まさかのフレンチブルドッグデザインのお店。

「なにここ?」
「レストラン?」
「外にメダカいるんだけど」
「でも、絶対フレブル好きだよね」
頭に浮かんだ言葉を、そのまま口に出し合いながら、
「入ってみようか!」と勢いで扉を開けることにした。
中から出てきたのは、にこやかな女性と、一見コワモテな男性。

そして、第一声がこうだった。
『R指定さんですか?』
当時R指定さんを知らなかったわたしたちは、何を言われているのか分からず、ただポカンと立ち尽くしてしまった。

(こう見えて)人見知りなわたしたちは、気の利いた返しもできず、
「違います……2名なんですけど、入れますか?」
と、なんとも平凡な返答をしてしまった。
しかしそのとき、ちょうどお店は閉店直後。
掃除も終わり、あとは施錠するだけ、というタイミングだった。
お二人は申し訳なさそうに、
「すみません、もう閉店してしまって……」
と、最後までやさしく対応してくれた。
こちらも時間を取らせてしまうのが心苦しく、
「フレブルがお好きなんですか?」
「実は、わたしたちもフレブルと暮らしていて……」
そんな話題を振ることもできないまま、その日はお店を後にした。
会いたい人には、フレブルのように”しつこく”。

それでも、ご夫婦のやさしい対応と、
「なにかご縁がありそうだ」という直感が頭から離れず、翌日ももう一度足を運ぶことにした。
この日は、沖縄旅行の最終日。
飛行機まであまり時間はなかったが、不思議と「絶対に会うべきだ」という確信があった。
お店が営業している時間を狙い、再び扉を開けると、店内は満席。
旦那さんはキッチンに立ち、奥さまがひとりでホールを切り盛りしていた。
時間の都合で食事は難しかったため、
「ドリンクだけでも大丈夫ですか……?」
と尋ねると、奥さまは笑顔で
「もちろん大丈夫ですよ」
と席へ案内してくれた。

店内には、フィギュアやレトロな看板、腕相撲専用の台まで。
カオスなのに、不思議と統一感のある世界観が広がっていた。

それらを眺めながらドリンクを飲みつつ、
“話しかけるタイミング”をうかがう。
しかし店内は終始忙しそうで、声をかけるのはさすがに気が引けた。
すると——。
奥さまが合間を縫って、
「よろしければどうぞ」
と、ステッカーを手渡してくれた。
そこに描かれていたのも、フレンチブルドッグ。

お店の看板とはまた違うデザインだったが、
この瞬間、「これはもう間違いない」と確信した。
名刺をそっと渡し、簡単に自己紹介をすると、
なんとご夫婦は、フレブル専門誌『BUHI』のことも、
当時運営していた「French Bulldog Life(フレブルライフ)」のことも知ってくれていた。
さらに、お店の看板犬もフレンチブルドッグで、名前は「ぶん太」。

同じフレブルオーナーだと分かった瞬間、距離は一気に縮まり、
「この二人の話を、もっと聞きたい」
と、心から思ったのだった。
有言実行。すぐに「フレブルライフ」で取材を。

その日はゆっくり話す時間が取れなかったため、
「今度、取材させてください」
とだけ約束をして、その場を後にした。
そして約一ヶ月後。
その約束を果たすため、今度は“取材”を目的に、再び沖縄を訪れた。
そのときの記事は、「フレブルライフ」で今も読むことができる。
店内の様子、ご夫婦の人柄、そして今はなきハンバーガーショップ「ボアソルチ」の空気感を思い浮かべながら、ぜひ改めて目を通してみてほしい。
▼当時の取材記事はこちら
【取材・看板犬】沖縄の新たなフレブル聖地!バーガーショップ「ボアソルチ」〜ぶん太5歳〜
気づけば「2021年に一番会った人たち」に。

取材や、その後の食事会を通して。
話せば話すほど、この二人のことを好きになっている自分たちに気づいた。
とにかくポジティブで、底抜けに明るい。
フレンチブルドッグはもちろん、生きものすべてに対するリスペクトが根底にある。
会えば自然と元気をもらえて、
気づけば2021年は、毎月のように二人に会いに沖縄へ通っていた。
(当時はコロナ明けで、飛行機代もホテル代も今とは比べものにならないほど安かった、という背景もある)
東京と沖縄。
決して近い距離ではないはずなのに、その年、わたしたちにとって二人は
「2021年に一番会った人たち」
になっていた。
ハンバーガーショップ「ボアソルチ」が、火災で全焼。

ある日、東京でいつも通りの日常を過ごしていたとき。
X(旧Twitter)で、信じられないニュースが流れてきた。
沖縄県宜野湾市のハンバーガーショップ「ボアソルチ」が、火災で全焼。
映像や写真とともに、さまざまなメディアでも報じられ、
画面を見つめながら、言葉を失ったのを今でもはっきり覚えている。
調査の結果、原因は建物に入り込んだ害獣による外的被害だったという。
幸いにも、火災当時、建物の中に人はいなかった。
ご夫婦はもちろん、近隣の方々にも怪我人はいなかったと知り、
まずはその事実に心から安堵した。
それでも——。
二人の気持ちを思うと、胸が締めつけられ、何も手につかなかった。
「自分たちに、何ができるのだろうか」
「今、連絡をしてしまっていいのだろうか」
答えが出ないまま、ただ時間だけが過ぎていった。
何百人に支えられた、ボアソルチ。

火災後の様子は、ボアソルチのInstagramを通して見守っていた。
焼け跡となった店舗の前ではフリーマーケットが開かれ、
そこには、火災を乗り越えて残ったフィギュアや家具、看板。
さらには、二人を想って集まった人たちが持ち寄った品々まで、
所狭しと並んでいた。

毎日、何百人もの人が訪れ、差し入れを手に立ち寄り、
フリマで買い物をして帰っていく。
その光景がSNSを通して伝わってきて、
「この二人は、どれほど多くの人に愛されているのだろう」
と、胸がいっぱいになった。
同時に、
「今、行ってもいいのか」
と足踏みしてしまっている自分自身が情けなく、
思わず涙がこぼれた。
「第二回のフレブルLIVEに、出ませんか?」

火災の片付けがひと段落し、
少しだけ落ち着いたように見え始めた頃。
それでも、わたしたちの気持ちは晴れないままだった。
フレンチブルドッグがつないでくれた、大切な縁。
そして、心から大好きな二人。
時間をかけて関係を築いてきたからこそ、
気を遣わせるような“支援”はしたくなかった。
わたしたちにできることは何だろう。
考え続けた末にたどり着いた答えが、
「もう一度、フレブルLIVEに出てもらうこと」だった。
ハンバーガーショップだけでなく、
二人はそれぞれクリエイターとして活動している。
そのプロダクトは、どれも本当に素晴らしく、
何より“愛”が詰まっている。
そんな二人の作品を、
一人でも多くのフレンチブルドッグオーナーに届けること。
そして、わたしたちは
「フレブルLIVE」という“場所”を用意することができる。
迷いに迷った末、
すべての思いを長文で綴り、
「今年も、フレブルLIVEに出ませんか?」
とメッセージを送ったのだった。
「フレブルLIVEがなかったら、今の自分たちはいない」

返事を待つ時間は、正直とても怖かった。
そしてー、返ってきたのは
「ぜひ、今年も出展させてください」
という言葉だった。
もう一度、誰かのために頑張れること。
大好きなフレンチブルドッグと、
オーナーさんたちが待っていてくれること。
決して万全な状況ではなかったけれど、
「もう一度、前を向こうと思えた」
と、二人は教えてくれた。
その年のフレブルLIVEが終わるまでは、
正直、自分の選択が正しかったのか分からなかった。
けれど、イベントを終えたあとにかけてもらった言葉が、
すべてを肯定してくれた。
「これがあったから、乗り越えられました」
わたしたちは、ただ“きっかけ”をつくっただけ。
二人の人柄と、プロダクトのクオリティ。
そして何より、
ボアソルチを訪れたフレンチブルドッグとオーナーたちが、
二人をもう一度、笑顔にしたのだと思っている。
やはり、フレンチブルドッグとオーナーたちのパワーは、計り知れない。
新たなアトリエ「シュガーアリス」「ボアラグワークス」

今ではすっかり、フレブルLIVEの常連となったボアソルチのお二人。
現在は同じ宜野湾市にアトリエを構え、
奥さまのアリスさんは「シュガーアリス」、
旦那さんのトモさんは「ボアラグワークス」として活動している。
そして先日、ようやくそのアトリエを訪れることができた。
ここからは取材班が撮影した写真とともに、お楽しみを!
「シュガーアリス」コーナー

アリスさんはここで、
ペイントや刺繍を中心としたオリジナルプロダクトを制作している。
椅子に座ったまま、少し腕を伸ばせば、
必要な道具すべてに手が届く配置。

すぐそばには、
フレンチブルドッグ・ぶん太専用のベッドも用意されていた。

ときに風刺のきいた表現も交えながら、
一度ハマると抜け出せない“シュガーアリスの世界”。

フレンチブルドッグの個性をさらに引き立てるプロダクトは、
どれひとつとして同じものがなく、すべてがオンリーワン。

ここでしか手に入らない、まさに至極の逸品ばかりだ。
「ボアラグワークス」コーナー

トモさんは、タフティングでオリジナルラグを制作している。
師匠はいつつも、ほぼ独学で腕を磨いたというから驚きだ。
トモさんらしさ全開のキャラクターやワードセンス。

ときには、アリスさんが描いたフレンチブルドッグのイラストを
ラグとして表現することもある。

制作エリアには、100種類近い毛糸がずらり。

微妙な色の違いにも気を配りながら、
一枚一枚、丁寧に“世界にひとつ”のラグを生み出している。
筋トレ好きが集まる、ジムエリアも

火災を乗り越えて残ったトレーニングマシンも並び、
今では筋トレ好きが自然と集まる場所になっているという。
中には、有名なパフォーマーの姿もあり、
日々、本格的なトレーニングに励んでいるそうだ。
まるで“大人の秘密基地”のようなアトリエ。

眠っていた子ども心が呼び覚まされ、
つい“素”が出てしまう、不思議な空間だった。
自由にトコトコ歩き回る、ぶん太の姿も愛らしく、
一日中いても飽きない場所になっていた。

–
フレンチブルドッグと、新たな未来へ。

火災という大きな出来事を乗り越え、
今もなお、新たな未来へ向かって歩み続けている二人。
この5年間、何度も会ってきたが、
弱音やネガティブな言葉を聞いたことは一度もない。
常に前を向き続けるその姿に、
わたしたちは何度、励まされてきただろうか。

5年前、フレンチブルドッグが出会わせてくれた二人。
あの日、勇気を出して開けた扉。
ふと手渡されたステッカー。
初めて通してもらった、あの席。
今振り返ると、
すべてが自然につながり、
今の関係性をつくっていたのだと思う。

まるでパワースポットのような存在の二人。
きっと、2026年の「フレブルLIVE」にも、
変わらず来てくれるはずだ。
もし沖縄で、あるいはフレブルLIVEで二人に出会えたら、
ぜひ声をかけてみてほしい。
きっと、たくさんのパワーをもらえるはずだから。
–
【Instagram】
▼ボアソルチ
@boasorte_okinawa
▼シュガーアリス
@sugararisu
▼ボアラグワークス
@boarug_works
▼トモさんの日常
@boa_medaka
▼アリスさんの日常
@sugararisu.nkmr